紗枝さんにも一礼して、席を立った。

ふたりから逃げ出したのだ。
そうすることで自分を守るしかなかった。

店の外へ出てみれば、いつの間に降り出したのか、細かい霧雨が容赦なく私に降り注いだ。

ついさっきまでは晴れていたのに最悪。
夜空まで嘲笑われるんだ、私は。

包み込むような雨をひと睨みして、歩き出した。


「――あっ、すみません」


ふわっと舞った一陣の風に巻き上げられそうになったスカートを押さえた拍子に、ぶつかった肩先。


「大丈夫ですか!?」


その男性に声を掛けられたものの、はずみでカバンから飛び出した自宅のカギを拾い上げ、今度は駆け出した。