パッシングレイン 〜 揺れる心に優しいキスを


すれ違うほかの社員と朝の挨拶を交わしつつ歩いていると、突然、手を引かれて近くの応接室へと引き入れられた。


「部長……」

「おはよう。もう大丈夫なのか?」


お見舞いに来てくれたときのように、額に手を当てて検温する。
部長の手が温かく感じるということは、すっかり平熱だ。


「三日間もすみませんでした」

「仕事のほうは心配いらない」

「なんだか、そう言われると、私が役立たずみたいです」


琴美にもそう言われたし、ついいじけたくなる。


「そういう意味じゃないって」

「分かってます」

「ただ、俺は寂しかったけどね」


サラリとそんなことを言われてしまうと、つい聞き流してしまいがちになる。
けれど、ストレートに言われた言葉を思い返して、時間差で恥ずかしくなった。


「二葉の反応って、可愛過ぎる」