パッシングレイン 〜 揺れる心に優しいキスを


「ひどいなぁ。別にそんなことないよ」


今年はあっくんもいるし。
と思ったところで、紗枝さんを紹介された日のことを思い出した。

今年はあっくんがそばにいてくれる誕生日には違いないけれど、出張でいなかった誕生日とは違った寂しさがある。
これまでだって、あっくんに彼女がいたことはあった。
でも今年は、婚約者なのだ。
将来を約束した相手。
それは、彼女とは比べものにならないくらい大きな存在だった。


「さっきの部長さんとやらが来てくれたからか?」

「え……?」

「コレなんだろう?」


胡散臭く、親指を立てて私に突き出す。


「やだな、違うってば」

「ばーか。単なる上司が部下の見舞いになんか、来るはずがないだろ?」


ツンと額を弾かれた。
そう言われてしまえば、「違う」と、断固として否定することもできない。
黙ってホットレモンに口を付ける。


「良さそうな人で安心したよ」