「その才能は元々違う人ものでしょ!?」


エレナの声が徐々に大きくなっていく。


「そうだね。でも、五良野正子はこのコンクールで入賞した事は一度もない」


その言葉にエレナはグッと言葉に詰まった。


その通りだ。


「どうして藤吉さんは大賞なんてとれたの?」


あたしは今一番聞きたかった質問をした。


正直エレナの言っていた人の才能どうこうという話なんて、どうでもよかった。


「松田先生も言ってたでしょ。絶え間ない努力って」


「努力……?」


あたしは首を傾げた。


「そう。五良野正子の才能を更に伸ばすためにあたしは毎日毎日努力を続けて来た。だからこそ、当時の五良野正子を超えたんだよ」


「でも、五良野正子は自分の才能をオークションに出したんだよ? それって、自分の才能に限界を感じたからじゃないの?」


五良野正子はオークションに出る数時間前に画家としての引退宣言を行っていたのだ。


そこで『自分の才能に限界を感じた』と言っているのを、ニュースで見た。


すると藤吉さんはおかしそうに声を上げて笑い始めたのだ。


あたしとエレナは思わず後ずさりをしていた。


「限界を感じたのは五良野正子であり、あたしじゃない。つまり、2人の力が合わさって初めて限界を突破したってこと」