オークション

そう言い、エレナはノートを取り出してあたしの机に置いた。


正直昨日の授業なんてどうでもよくて、藤吉さんの手がどうなっているかというほうが気になっていた。


画家の五良野正子は藤吉さんの手が体に合わず、腐敗を始めている。


あたしはノートを書き写しながら昨日見た写真を思い出していた。


また気分が悪くなりそうだったが、片方だけ体に合わなかったというのがどうしても気になっていた。


「昨日の授業はちょっと難しかったんだよねぇ」


エレナがあたしのノートを覗き込みながらそう言って来た。


科目は数学。


エレナの苦手な分野だ。


「これが写し終わったら、勉強見てあげようか?」


あたしがそう言うと、エレナは一瞬にして目を輝かせた。


「本当!? すっごく助かる!!」


「元々それが狙いだった?」


「えへ、バレた?」


そんな会話をしていると、教室のドアが開いて藤吉さんが入ってきた。


途端にクラスメートたちがかけより、絵の話題を始める。