少年のベッドの横で母親が不安そうな表情を浮かべているのがわかった。


2人には点滴が打たれ、酸素マスクのようなものもセットされた。


病院の風景そのものができあがっている。


「滅多にないってことは、たまにはあるんだな」


隣に座っていた男性がそう呟き、あたしは身震いをした。


どんな手術でも失敗や後遺症はつきものだ。


だからこそ、事前に患者への説明や同意が必要になってくる。


それが、こんな場所での手術となると手順や説明なんてないに等しい。


オークション会場では法律は存在しない。


その一番の理由が、この手術にあるのではないかと、ようやく理解できた。


しかし手術の準備は滞りなく終わってしまった。


あたしはモニターから視線を外し、うつむいた。


これから凄惨な場面を見なければいけないのだとわかっていても、冷静でいられる事はできなかった。


「それではこれより手術開始です!!」


モンピーの楽しそうな声が会場内に響き渡ったのだった……。