少年は母親の後ろに隠れたままで、その手は母親の服の袖をきつく掴んでいる。


その様子を見るだけで胸が痛む。


「さぁ、お名前をどうぞ!」


モンピーにそう言われ、母親が「特別会員ナンバー1004番です」と、笑顔で答えた。


子供は自分の後ろで怯えているというのに、母親は嬉しさで目に涙を浮かべている。


「知的障害を直すために落札したんだ……」


あたしは小さく呟いた。


この展開は誰も予想していなかったらしく、出品者の戸田啓太さんも少し混乱した顔を浮かべている。


このまま脳味噌を取り換えたら、戸田啓太さんはどうなるんだろうか?


もし、万が一、少年の病気がそのまま移動してしまったら……?


知的障害についてすぐに調べたい気持ちになったが、通信機器がない状態なのでそれもできなかった。


そうしている間にステージ上には白いベッドが2つ運び込まれてきた。


少年と戸田啓太さんが何か注射を打たれているのが見える。


すると2人は体の力を失ったように目を閉じ、ベッドへと寝かされた。



「さぁさぁみなさまお待ちかね! 今日は脳味噌の交換という大掛かりな手術を行います! しかし安心してください! この会場に呼んでいるのは一流の医師たちです! 失敗することは滅多にありません!!」


モンピーがそう言い、2人のベッドの周りをクルクルと回る。