薄暗い階段を下りていく複数の背中を見て、あたしは一瞬唖然としてしまった。


この前ここを通った時はあたしとエレナだけだったけど、今日はこんなにたくさんの人がいる。


今日はここへ来る時間が早かったからかもしれない。


後ろ姿を見ただけでも、仕事の途中や学校の途中でここへ来たと言う事がわかった。


あたしも制服姿のまま彼らの列に加わった。


沢山の足音が響き、そのどれもが自分の人生を変えたいと願っているのが伝わって来る。


凡人のまま終わりたくない。


夢や希望を叶えて、大きな世界に羽ばたいていきたい。


それぞれの強い願いが、一歩一歩となって進んでいく。


そして……ついにオークション会場に到着した。


前回と同じように通信機器を預けて、椅子に座る。


1人でここへ来る事になるなんて、一度目の時には考えてもいなかった。


あの時はあたしもエレナと同じように、このオークションに嫌悪感しか抱いていなかった。


それが、藤吉さんの変化を目の当たりにしてあたし自身も変わってしまったのだ。


オークションが始まるまでの時間、あたしは一秒でも早く時間が過ぎていかないかとはやる気持ちでいたのだった。