平凡から抜け出したい。


大きな夢などないけれど、単純にそう思う。


それこそが、今のあたしの夢になりつつあった。


「藍那、さっきからボーっとしてるけど、どうしたの?」


エレナにそう声をかけられてハッと我に返った。


今はエレナと2人中庭でお弁当を食べている所だった。


目の前でエレナが楽しい話をしているにも関わらず、あたしの気持ちは藤吉さんへと向いていた。「なんでもないよ」


あたしはそう言って笑顔を浮かべた。


いつもの昼食風景。


これがいつまでも続く事が普通だと思っていたけれど、今はそんな考えが消えようとしている。


いつもと同じ毎日なんていらない。


周囲から頭1つ分とびぬけた部分がほしい。


そんな感情があたしの中を支配していた。


「でね、昨日お母さんったらね」


エレナが思い出し笑いをしながら話を進める。


その時、スカートの中でスマホが震えた。


あたしはエレナの話に相槌を打ちながら画面を確認した。