その度にあたしはエレナの肩を抱いて「あたしだけはちゃんとわかってるから」と、言葉をかけた。


エレナの悔しそうな顔とは裏腹に、日を追うごとに藤吉さんの絵はレベルを上げて行った。


どんどん成長を続ける彼女を見て、先生が作品をサイトのオークションに出店してみるように促した。


するとその作品は見る見る内に金額が跳ね上がり、100万円を超えているのだという。


無名の高校生が描いた絵が100万円になるなんて、誰も思っていないことだった。


それを見て、あたしは藤吉さんが躊躇なく一億という金額を提示した意味がようやく理解できていた。


才能を開花させプロになると言う事は、凡人では考えられないほどの収入を得られると言う事なんだ。


今の時点で1枚100万円の絵が描けるなら、一億の負債なんてあっという間になくなるだろう。


そう思うと、あたしの心はカッと燃えるように熱くなった。


目の前にいる藤吉さんに手を伸ばしたくなる。


あたしもそっち側の人間になりたい。


そんな、強い願望が突き上げて来る。


このまま高校を卒業して進学しても、あたしの人生は目に見えている。


平凡な男性と結婚して、平凡な家庭を作り、そしてそれを幸せだと呼ぶんだ。


あたしには他の道があり、未来がある。


藤吉さんがいなければ、そんな事にも気が付かずに生きていただろう。


あたしの人生は今からでも変える事ができる。


藤吉さんを見ていると、そう思えるのだ。