それから一週間後。


サイトからのメールをすべて消したあたしだったが、登録を解除することはなかった。


『またオークションの連絡がくるかもしれないよ?』


エレナのあの言葉があたしの中に止まっていた。


そうだ。


またオークションがあるかもしれないんだ。


誰かが才能を売りたがるかもしれない。


そう思うと、登録を解除する指が途中で止まり、動かなくなった。


今にも華やかな世界に飛び立とうとしている藤吉さんを、横目で見る。


藤吉さんは授業中でも堂々と絵を描いていて、それを咎める先生は今はもういなかった。


彼女の才能に惚れ込み、沢山のコンテストに参加することを進め、そして授業さえもうけなくていいという異様な状況になっていた。


彼女は教室で描いていた風景画を締切ギリギリのコンテストに参加して、一番大きな賞を取ったらしい。


そのことで学校内は持ちきりになり、藤吉さんはあっという間に有名人になっていた。


藤吉さんが有名になればなるほど、エレナは暗い表情を浮かべるようになっていた。


時々思い出したように「あんなの間違ってる」と、小さく呟く。