☆☆☆

いつもより20分ほど早く学校に到着した。


廊下を歩いていても誰の姿もなくて、いつもの学校なのになんだか不思議な気分になった。


自分の足音しか聞こえてこない。


教室へ向かうと、その中に人影が見えてあたしは一旦足を止めた。


もう誰か来てるんだ……。


今日は自分が一番乗りだと思っていた予想が外れて、少し驚く。


教室の前のドアを開くと、こちらに背中を向けている人物が目に入った。


藤吉さんだ!


その後ろ姿ですぐにわかった。


藤吉さんはテラス側の一番後ろの席で、外を見ながら絵を描いている。


とても集中しているようで、あたしが教室へ入ってきたことにも気が付いていない様子だ。


オークションで《画家の手》を買った藤吉さんがここにいる……。


やっぱり、昨日のオークションはドッキリか何かだったんだ。


本当に手首を切り落としたり、拳銃を発砲するなんてあるわけがない。


そう考え、少しホッとする。