「藍那……?」


エレナが不安そうな顔をあたしに向けて来る。


「大丈夫だよ」


あたしはスマホを男へ返し、そう言った。


今のメールが本当にあたしに送られてきたメールかどうかなんて、わからない。


もしかしたら、スタッフだけが送られている偽物のメールなのかもしれない。


そう思っていると、ドアが開いて小柄な男性が1人スタッフに抱えられるようにして部屋に入ってきた。


「こいつもか。今日はオークションの新人が多いな」


1人が面倒くさそうにため息を吐き出してそう言った。


「特別会員限定のポイントなんてやるからだ。オークションの客を増やすためにやった事だろうが、新人は面倒くさくて嫌いだ」


男の連れて来たスタッフが相槌を打ちながらそう返した。


「仕方ない、こいつを見せしめにするか」


一番奥に立っていた男がそう言い、今連れてこられた男性客の前に仁王立ちした。


男性客はあたしたちと同じように耐えられなくなったのか、青い顔をして震えている。


「よく見ておけ。このオークションを途中で抜け出そうとしたり、オークションに無関係な人間に口外した者はこうなる」


男はそう言うと内ポケットから黒い拳銃を取り出した。


偽物?


そう思う暇もなく、銃声が鼓膜をつんざいた。