「エレナ!」


見るとエレナの顔は真っ青で、手足が冷たい。


「ここを開けてよ!!」


「できません」


同じ言葉を繰り返す男に歯を食いしばる。


あたしの吐き気はまだ我慢ができる。


でも、エレナをこのままほっておくことはできない。


「見てわからないの? 友達が倒れてるの!」


「ドアは開けることはできません」


かたくなに態度を崩さないスタッフに、胸の奥から怒りが込み上げてくるのがわかった。


「開けてってば!!」


あたしはそう怒鳴りながらスタッフを無理やり押しのけた。


そしてドアに手をかける。


その瞬間。


スタッフの1人があたしの手を後ろへ捻りあげ、痛みで目の前が瞬いた。


「いっ……」


顔をしかめるあたしの周りに数人のスタッフが集まり、エレナの体が乱雑に抱えあげられるのを見た。


「やめてよ!」


悲鳴に近い声を上げる。


しかし、会場内にいる誰もこちらを見てはくれない。