唯一才能を購入していない同たいだけが、腐敗せずに残っている状態だった。


「誰か……誰か……!」


どうにか声を絞り出し、腕で体を引きずるようにして鉄格子まで這っていく。


床に肉片がこびりつき、血のすじが付いていく。


「誰……か……」


最期の力を振り絞って鉄格子を掴むと、その衝撃で腕の肉がボトリと落ち、骨がむき出しになった。


どんどん自分が腐って行くのがわかる。


助けを求めて鉄格子の外を見ていたら、途端に視界が狭くなった。


右目が取れて落ちてしまったのだ。


それでもあたしの意識ははっきりとしていた。


ここまで腐敗しているのにどうして……?


そう思った瞬間、思い出した。


《ミス日本の顔》を落札した時、脳味噌は取り換えずにいたことを。


「あ……あぁ……」


もう声を出す力も残っていなくて、あたしは鉄格子の前で倒れ込んだ。


どこからかブシュッ!と腐敗ガスが抜ける音が聞こえてきていたが、耳が腐って落ち、それも聞こえなくなった。