「あの才能は死ぬまでちゃんと使い続けなければ、腐って落ちちゃうんだよ?」


「え……?」


先輩の言葉にあたしは目を見開いた。


腐って落ちる……?


その瞬間、画家の五良野正子さんの手が腐敗してしまった写真を思い出した。


五良野正子さんは藤吉さんの手をしっかり使いこなしていなかった。


だからあの手は腐ってしまった……。


「じゃ……じゃぁ……あたしは一体どうなるの!?」


思わず大きな声が出る。


こんな中にいたんじゃどの才能も満足に使いこなすことはできない。


このままじゃあたしは……。


「ごめんね。あたしは何もしてあげられない」


石澤先輩はそう言い、椅子から立ち上った。


「待って、先輩!!」


あたしは両手でアクリル板を叩く。


部屋にいた刑務官がすぐにあたしを取り押さえた。


先輩があたしに背中を向ける。


「先輩! お願いです、あたしを助けて!!」


叫び声はドアを閉める冷たい音にかき消されてしまったのだった。