「どうしてって、それはあたしが聞きたい。どうしてこんなところにいるの?」


険しい口調でそう言う先輩にあたしはうつむいた。


オークションの事はなるべく避けて、ここへ来た経緯を説明した。


「そう……」


石澤先輩は呆れたように息を吐き出す。


「先輩、あたしどうしたらいいんですか!?」


「どうしたらって言われても……。あたし、オークション会場であなたに会ってから、あなたの事を少し調べてみたの。マラソンに彫刻。色々な事をしてるんだってわかった」


そう言いながら、なぜだか石澤先輩の口調は険しくなっていく。


どうして怒っているのかわからなくて、あたしは不安で混乱した。


「あなた、1つの才能を死ぬまで使い続ける意思が最初からなかったってことだよね?」


そう言われて、あたしは曖昧な返事をした。


最初はマラソンで通用するように頑張ろうと思った。


でも、途中から他の才能に興味が湧いてきて、彫刻家の腕を買った。


それはそれで楽しかったけれど、見た目が美しければ更に人気が出ると思い、ミス日本の顔を買った……。


思い返してみれば、一度は才能を開花させたもののどれもが中途半端で終わっている事に気が付いた。