あたしは四畳半ほどの灰色の部屋にいた。


部屋には真っ白なベッドが1つと、トイレと、洗面所がむき出しの状態で設置されていた。


重たく冷たい銀色の鉄格子が、あたしを外へ出る事を拒んでいる。


あの日警察に掴まってから、あたしは北川藍那を誘拐した犯人としてここにいた。


朝になれば起きて、点呼を取られ、ご飯を食べて、部屋の掃除をして、警察署内の仕事につく。


走ることも、彫刻を作る事も、美容に専念することもない日々。


こんな毎日さっさと抜け出したい。


北川藍那はこのあたしだ。


行方不明でもないし、死んでもいない。


それなのに……オークションの事は口外できなかった。


オークションは医療機関や警察にまで幅を利かせているのだ。


ここで口外した事がバレれば、あたしはその時点で始末されてしまう。


そう考えると、どうしても真実は言えなかった。


あたしが北川藍那であると言う事を必死で説得し続けるしか、できなかった。


ベッドに腰を下ろしてぼんやりと足をかいた。


最近足の付け根に違和感がある。


捕まる前に一度感じた、足の違和感。


それが日に日に強まっているように感じるのだ。