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一刻も早くどうにかしなきゃ!


焦る気持ちを押さえながら家に向かって走った。


オークション会場の連絡先くらい、スマホに入れておけばよかったんだ。


今更になってそんな後悔が胸を付いてきて、あたしは下唇を噛んだ。


10分ほど全力で走った時、ようやく家が見えて来た。


これでどうにかなる……!


そう思った瞬間、家の中からスーツ姿の男の人が数人出て来た。


周囲を警戒しているように見回し、トランシーバーのようなもので誰かと連絡を取り合っている。


その姿を見てあたしは咄嗟に電信柱の陰に隠れていた。


男性たちの後から両親が心配そうな表情を浮かべて出て来るのも見える。


まさか、警察官!?


あたしがお店に寄っている間に両親は警察官を呼んだのだ。


数人の男たちが家の周りを歩き始める。


あたしは身を隠したまま、自分の部屋の窓を見上げた。


外にこれだけの人数がいると言う事は、家の中にもまだ警察官が待機しているのかもしれない。


あたしの帰りを待っているのかもしれない……。


そう思うと、動こうとしても動く事ができなかった。


ここで捕まれば、オークションのスタッフに連絡を取ることもできなくなってしまう。


背中にはジットリと汗が滲んで、呼吸が乱れる。