そう思い、あたしは自分の席に座った。


「そこは藍那の席だよ」


座った瞬間、エレナにそう言われてあたしは「へ?」と、首を傾げた。


エレナは険しい表情をしていて、冗談を言っているようには見えない。


「何言ってるの、あたしじゃない」


「ねぇ本当に誰? 北川さんは事故にあってしばらく休むって聞いてるけど」


委員長が遠くまで聞こえる声でハッキリとそう言って来た。


「あぁ。事故の怪我は大したことなかったの。だから今日から来たんだけど……」


言いながら自分の言葉はどんどん小さくなってゆく。


みんなの視線が突き刺さり、居心地が悪い。


一体どうしたっていうんだろう?


まるであたしがあたしじゃないみたいな雰囲気になっているけれど……。


そう考えた瞬間気が付いた。


あたしは慌てて手鏡を取り出し、自分の顔を確認する。


もっと綺麗になりたくて、ミス日本を追い抜きたくて昨日頑張ったんだ。


その結果が……鏡の中に見知らぬ美少女がうつっていたのだ。


目はあたしの倍ほども大きく、小さな顔で、鼻もスッと通っている。


口は小さめで、唇はプックリと膨れてとても愛らしい。


ミス日本にも負けないような顔。


でも、その中にあたしの面影はどこにも残っていなかったのだ。