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目が覚めた時、あたしは車の中にいた。


まだ少しあたまがボーっとしていて、体は重たくて動かない。


しかしこの車がオークションの車だということは、しっかりと理解していた。


「おはようございます、気分はどうですか?」


そう聞かれて首を動かそうとするが、何かに固定されていて動かなかった。


どうやらギプスをはめられているようだ。


「体が重たいです」


そう返事をするが、声が枯れていてまるで自分のものではないようだ。


「今回の手術は大掛かりだったのでしばらく違和感は続くと思います。でも、できばえはなかなかですよ?」


スタッフはそう言い、手鏡をあたしの顔を前に差し出した。


そこに写っている顔を見て、あたしは一瞬息を飲んだ。


北川藍那の顔でも、新田朝子の顔でもない。


どちらかといえばあたしよりの顔なのだが、まるで別人のように美しかったのだ。


「術後数時間が経過しているので、少しは馴染んできていると思います。


まったくの別人の顔のままだと周囲が怪しまれるので、足や腕のように自然と自分に近くなるようになっているので」


「綺麗……」


自分の顔に近づくようになっている。


そう言われてもそれが理解できないほどに鏡の中の少女は美しかった。