石澤先輩はなかなかに後輩思い先輩だったようだ。


オークション会場なんかで知り合わなければ、もっと仲良くなれていたかもしれない。


あたしはステージへ向かいながらそう思った。


内心、笑いが止まらない。


アスリートの才能も、繊細な彫刻家の才能も、そして、容姿も。


あたしはついにすべてを手に入れる事に成功したのだ。


ステージに上がってきたあたしを見て、モンピーがほほ笑む。


あたしはそれにほほ笑み返した。


今すぐ走り出したいような衝動を必死で押し込めて、あたしはベッドに横になった。


今回の手術はいつもより複雑で、多くの時間が必要になるようだ。


首から上を交換するだけでは脳も一緒に交換されてしまう。


一旦脳を取り出し移し替え、そして顔を取り換えるのだ。


「大がかりな手術になるので、今回だけは全身麻酔になります」


白衣の男性がそう言い、あたしの腕に注射をした。


透明な液体が流れ込むたび、あたしの意識は遠ざかっていく。


そして、あたしは会場内に響き渡る恐怖の悲鳴を聞く事も泣く、深い眠りについたのだった。