中田優志さんにもう一度会いたいから。


その感情を押し込めて、あたしは言った。


「モデルになりたいからです」


石澤先輩の手が一瞬止まったことを、あたしは見逃さなかった。


石澤先輩はこのオークションで体を買い、自分の夢を叶えている。


あたしも同じ状況なのだと言う事で、迷いが生じているのがわかった。


元々、石澤先輩は今回の商品を落札するかどうか悩んでいた。


その気持ちがぶり返してきたのだろう。


「それが、あなたの夢?」


「はい」


あたしは迷うことなくそう返事をした。


石澤先輩があたしの事を知っていれば、こんな虚言を信じる事もなかっただろう。


モニター上の金額があたしの内込んだ1億10000万円でピタリと止まった。


「1億1000万円! これ以上はありませんか!?」



最近のオークションでは最高額のため、モンピーはひどく興奮状態だ。


汗が流れてメイクも落ちかけている。


「夢は叶えるためにある」


あたしが落札する瞬間、石澤先輩はそう言ったのだった。