もうすぐ《ミス日本の顔》のオークションが始まる。


あたしはもう一度椅子に座り直した。


その時だった。


不意に見知った顔を見つけてあたしは動きを止めた。


周囲を見回すだけじゃわからなかった、ナナメ前の席に座っている女性……。


「石澤先輩」


あたしはその人の名前を呼んだ。


名前を呼ばれて驚いたように振り向く石澤先輩。


その顔には大きなマスクをつけている。


芸能人だからだろう。


「あなたは……？」


石澤先輩はあたしを見て困惑した顔を浮かべた。


しかし、制服を見て梅上高校の生徒だと言うことは理解できているはずだった。


「1年の北川と言います」


自己紹介をしても、石澤先輩は首を傾げるばかりだった。


仕事が忙しくてテレビを見る暇がないのかもしれない。


「石澤先輩も《ミス日本の顔》を狙っているんですか？」