そんな……!


あたしは自分の両腕を見下ろした。


新田朝子さんの恋人は中田優志さん!?


確かに、中田優志さんはカッコよかった。


「でも……! 彼の母親はガンなんかじゃありませんでした。オークションに参加して同情を買い、自分の才能を高値で売るための虚言だったんです。


その間にも、彼は私から500万円を借金していました。合計で1億500万円という大金を手にした彼は完全に私の前から姿を消してしまいました……」


辛そうな表情を浮かべて最後まで話終えた新田朝子さんに、あたしは小さく息を吐き出した。


そうだったのか。


中田優志さんの母親はガンなんかじゃなかった。


あの人はただ遊ぶお金が欲しかっただけなんだ。


才能を持っていればそのくらいのお金すぐに稼ぐ事ができるのに、少しの努力もしたくないと思ってしまったのだろう。


それに……。


新田朝子さんの話が本当なら、中田優志さんはあんな顔の女性が好みなのだと言う事になる。


あの顔を手に入れれば、中田優志さんの恋人になれるかもしれないのだ。


そう思うと、胸の奥から熱いものが開け上がって来るのを感じた。