「綺麗……」


あちこちからそんなため息交じりの声が聞こえて来る。


彼女はまだこんなにも綺麗だ。


それなのに《ミス日本の顔》を売ってしまうのはどうしてだろうか?


疑問を感じていると、モンピーが同じ質問を彼女へ投げかけた。


新田朝子さんはモンピーからマイクを受け取り、そしておずおずと話を始めた。


「私は去年ミス日本になりました。それから1年間色々な活動を通して、色々な方とお会いしてきました。


私を尊敬してくれている方、私の意見をしっかりと聞いてくれる優しい方。しかし、中には私の顔だけで近づいてくる男性も多くいらっしゃいました……」


新田朝子さんはその外見にピッタリな、とげのない声でそう言った。


しかし、その表情は硬く何かを思い出して怒っているように見えた。


「半年前私はある男性と出会いました。背が高く、とてもハンサムで、夢を持っていて、優しくて……私はすっかり彼の虜になってしまったのです」


新田朝子さんの話にモンピーが大げさに身振り手振りで反応している。


「しかし、彼は1度私と体の関係を持つと、徐々に変わって行きました。


彼は自分が夢に没頭している間に母親がガンになってしまったのだと、私に言ってきたのです。母親の余命は3か月。


少しでも一緒に過ごしてあげたいと……」


新田朝子さんの話にあたしは目を見開いた。


それはまるで彫刻家の中田優志さんが言っていたこととっくりだったからだ。


「彼はこのオークションで自分の才能を売り、そのお金で母親との時間を有意義に使う事を選んだんです」