オークション

その映像に気が付いた数人のお客さんたちから「かわいい!」「ピエロだ!」という楽しそうな声が聞こえて来た。


今から起こる出来事をなにも知らない証拠だ。


お客さんから嬉しい言葉をもらったモンピーは一気にテンションが上がり、自己紹介前にステージ上で手を振ったり飛び跳ねたりと、サービスをしている。


あたしはそんなモンピーを見ながら軽く奥歯を噛んだ。


そんな事しなくていいから、早くオークションを開始しろ。


心の中でそう毒づいた。


「さぁさぁ! みなさまこんにちは! 司会を務めさせていただきます、モンピーです!!」


モンピーがそう言うと、会場内に黄色い悲鳴と拍手が沸き起こった。


「モンピーだって、可愛い!」


「お猿さんみたいな顔してるもんね」


きゃぁきゃぁと騒ぐ周囲のお客さんたちに、あたしはしかめっ面をした。


まるでど素人の集団だ。


今日ここで生首を切られ、《ミス日本の顔》と付け替えられる人がいるというのに、そのことを全くわかっていない。


まぁいい。


回りがうるさいのはいまだけだ。


手術が始まれば嫌でもみんな黙り込むだろう。