「ちょうどよかった! 昨日新作が出来上がったばかりなんだよぉ!」


田辺さんは嬉しそうにあたしに言う。


でも、今はそんな話を聞いている暇はないんだ。


「ごめんなさい。今、ちょっと急いでて」


そう言うと田辺さんは売り場へ行きかけた足を止めた。


「もしかして、オークション?」


「そうです」


あたしは大きくうなずいだ。


「でも、藍那ちゃんはもう2つも才能を買ったでしょう?」


田辺さんは眉を下げてそう言った。


「そうですけど、今回のオークションはまた少し違うものなんです」


「今度は何が欲しいの?」


そう聞かれて、あたしは一瞬躊躇した。


言うべきかどうかわからなくて、空中に視線を漂わせる。


しかし、今までだって同じように才能を購入してきたんだ。


今更何を買おうと田辺さんに秘密にしておく必要はない。


そう思ったあたしはようやく口を開いた。


「《ミス日本の顔》です」