「……これ、本当にお前が作ったのか?」


輝夜が苦しげな声でそう言った。


その言葉にあたしは心の中でニヤリと笑った。


一瞬、輝夜はオークションの事を知っていてあたしの才能は買ったものだと言われるのではないかと思っていた。


でも、それは無駄な心配だったようだ。


「あたしが作った」


あたしは素直に、本当の事を言った。


あたしが、中田優志さんの腕を使って作った。


「でも……今までそんな事ができるなんて言ってなかったじゃないか」


「輝夜に言う必要がなかったから」


あたしは躊躇なくそう返事をした。


輝夜の表情が歪む。


「でも、俺は……!」


そこまで言い、輝夜は口を閉じた。


言いたい言葉をグッと押し込み、ベンチを立ち上がる。


あたしは輝夜の背中が小刻みに震えている事に気が付いていた。


しかし、声はかけなかった。


「なんでもない」


やがて輝夜は小さな声でそう言うと、屋上を後にしたのだった。