ここまでお祝いされた事も、生まれて初めてかもしれない。


マンマルマラソンの時はみんなまだ茫然としていたから、今回の方が派手な感じがする。


「藍那!」


声をかけられて振り返ると、輝夜が立っていた。


「輝夜……」


「今日、昼飯一緒に食わないか?」


そう言ってくる輝夜に一瞬たじろいた。


まだ登校してきたばかりだと言うのにもう昼の予定を聞いてくると言うことは、なにか重要な話があると言う事だ。


あたしは返事に困り、空中に視線を泳がせた。


輝夜はクラスで1番人気の男子生徒だ。


あたしが有名になる前からあたしの事を見てくれていたことも知っている。


誘いを断る理由なんてどこにもない。


「……わかった」


あたしは小さく頷いた。


輝夜はホッとしたように笑顔を作る。


その笑顔が可愛くて、女子生徒の間から黄色い悲鳴が聞こえて来た。


こんなに人気のある輝夜があたしを見てくれている。


今のあたしが輝夜と付き合ってもきっと誰も文句は言わないだろう。


あたしは自分の腕をさすり、ぼんやりと中田優志さんの事を思い出していたのだった。