しかし……。


モニターに映し出された五良野正子の姿にあたしたちは同時に言葉を失った。


五良野正子は木製の椅子に胴体と手足をロープで結ばれて固定された状態で、男性スタッフ2人に運ばれて登場してきたのだ。


「なに……あれ……」


思わずそう呟く。


しかし会場内は歓声と拍手でワッと賑やかになった。


誰もこの状況がおかしいとは感じていないようだ。


「もしかして、これも演出?」


エレナがそう聞いてくる。


五良野正子本人はニコニコとほほ笑んでいるし、きっとそうなんだろう。


ちょっと変わった演出だけど、お客さんたちにはうけているから大丈夫なのだろう。


「それでは、オークション開始です!!」


ピエロが大きな声でそう言った。


「え? 開始?」


あたしとエレナは目を見交わせる。


ステージ上にはピエロと拘束された五良野正子の2人だけ。


肝心の絵は紹介されていない。