中田優志さんの腕を手に入れたあたしは、翌日すぐに行動を開始した。


両親には風邪をひいたと嘘をついて学校を休み、2人が仕事に出かけたのを見計らって買い物へ出かけた。


目的はホームセンターで彫刻に必要な材料を買うためだった。


大きな作品だとチェンソーが必要になってくるが、部屋に飾る事ができる小さなものをいくつも作る予定だった。


購入したのは彫刻刀一式と、木材、ヤスリ、ニスだった。


マラソン大会で取得した賞金で十分に買える金額だ。


買い物を終えたあたしは走って家へと戻って来た。


足の速さも鈍ることなく、ちゃんと走れる事を確認した。


これで、次の大会まで家にこもっていても大丈夫だ。


そう確信したあたしは部屋一面に新聞紙を広げた。


彫刻と聞くと色合いが地味で可愛くないイメージがあった。


それを払拭するものを作り、同年代の子から指示を得ようと言う考えだった。


女子高生の可愛い物が好きな力と、彫刻家の才能が合わさった時なにができあがるのか……。


あたしはまっさらな木を目の前にして、声を出して笑ったのだった。