そんな言葉を恥ずかしげもなく言った後、エレナは少女漫画を胸に抱きしめた。


最近人気急上昇中の少女漫画で、よくある恋愛模様を描いた作品だった。


しかし、キャラクターたちの純粋さが若い子たちにヒットしてどんどん売り上げを伸ばしている。


来年には映画化が決まっていて、その俳優さんがあたしの好きな芸能人だったのですぐに原作の漫画を買ったのだ。


エレナは俳優さんにはそれほど興味がない様子だけれど、漫画は気にいったようだ。


「続編あるけど、読む?」


そう言いながら本棚ならコミックを取り出してエレナへ差し出す。


するとエレナは飛びつくようにしてコミックを受け取った。


「こんな恋愛、あたしもしたい」


しかしすぐにページを開こうとはせずに、物語に浸るように目を閉じてそう言った。


「あたしも」


あたしの場合はこんな恋愛を俳優さんとしたい。


というのが正直な気持ちだった。


学校内に少しだけ気になる存在の男子はいるものの、恋に発展するかどうかまだわからない。


その子をキャラクターに当てはめて考えてみても、どうもしっくり来なかった。


「エレナは好きな人いるの?」


あまりにうっとりした表情をするものだから、あたしはそう聞いた。


するとエレナはパチッと目をあけて恨めしそうにあたしを見て来た。


「いない」


「そうなんだ?」