つまり、中田優志さんの才能に1億以上の価値はないのだ。


あたしは悔しそうな顔を浮かべる中田優志さんへ向けてほほ笑んだ。


「そんな顔をしていたらファンの人が心配しますよ?」


そう言うと、中田優志さんはあたしから視線を逸らした。


自分の意にそぐわない相手に落札されても、それは変えようのない事実だ。


このオークションではこの場で相手の一部を交換する。


それが大きな見せ場なのだ。


反論してグダグダになるような事態は、きっと許されないだろう。


中田優志さんもその事を理解しているから、鋭い視線を向けて来るだけで文句をいう事はなかった。


そして、あたしたちはスタッフの準備したベッドに寝かされていた。


2度目の手術。


緊張もしているが、それよりもこれから先の事を考えるとワクワクして仕方がなかった。


男性の同等の力を手に入れることで、できるようになることは格段に増えるはずだった。


女の子だからと心配されて行動を制限される事もなくなる。


女性からすれば男性が想像している以上に使える『腕』なのだ。


そして、手術は始まった。


横になり、自分の腕が切断されてゆくのを感じる。