ステージに上がってきたあたしを見て、モンピーは一瞬言葉を失った。


あたしがニコッとほほ笑むと、モンピーは我に返り「なんという事でしょう! 今回の購入者は、かの有名なマラソン選手です!!」と、会場内をわかせた。


会場内の視線を一斉に浴びるあたしは、軽く手を振った。


それに答えてくれる人たち。


このステー上はとても心地いい場所だ。


あたしは笑顔を絶やさないまま、人々を見つめた。


「君……どうして?」


そんな声が聞こえてきてあたしは振り向いた。


中田優志さんが困惑した表情であたしを見ている。


「どうしてっていうのは、どういう意味ですか?」


「いや……彫刻家の才能が欲しいのが意外だったから」


「別に、彫刻に興味はありません」


キッパリそう言うと、中田優志さんはポカンとしてあたしを見つめた。


「筋肉もついていて繊細な作業ができるその手は、他の事にも使えそうだからです」


「そんな……僕は彫刻家としての才能を使ってくれる人に売りたいんだ!」


「そう言われても……金額はもう上がりませんでした」


あたしは残念な表情を浮かべてそう言った。


本当に才能がほしければ、1億より跳ね上がったはずだ。


だけど誰もそれ以上は出さなかった。