その間にも金額はどんどん上がって行き、5000万円になっていた。


男性は更に汗をにじませ、顔色も悪くなっている。


その様子を見て、あたしはクスリと笑った。


「買わないんですか?」


そう聞くと、男性はビクッと体を跳ねさせてあたしを見た。


「彫刻家さんの腕。いらないならあたしが買いますよ」


そう言い、あたしはボードに手を伸ばした。


男性が目を丸くし、何か言いたそうに口を開ける。


しかし、あたしはその言葉を待たずに金額を打ち込んだ……。


プチンッ。


あたしの中で何かが壊れるような、とても小さな音がした。


あたしが打ち込んだ金額は……1億。


一気に跳ね上がったそのその数字に、会場内がワッとどよめく。


その瞬間感じる、高揚感。


ゾクゾクと背中を駆け上がって来る熱に、体を震わせた。


「1億! 1億以上はありませんね!?」


モンピーも興奮したように声を張り上げる。


あたしは男性を見て笑った。


「欲しい物は、こうやって手に入れるんですよ」


そう言い、席を立ったのだった……。