3か月……。


たった3か月じゃできる事は限られている。


だから中田優志さんは自分の才能を捨てて、母親と過ごす時間を優先させることに決めたんだ。


モンピーが中田優志さんに代わって、そのような説明をした。


会場内から、すすり泣くような音が聞こえて来る。


みんなこういう話には弱い。


頑張ってきた人が不幸に落とされる話は、心地よく心の中に入って行く。


でも……オークション会場では冷静でいなければいけない。


今の話が全部本当なのかどうかもわからない。


みんなが自分の才能を欲しがるように仕掛けられた、罠かもしれないのだ。


会場内の中田優志さんのポジションはとても優位だ。


みんなが中田優志さんを可愛そうな人だと思い、その才能を購入して、3か月の間母親と素敵な時間を過ごしてほしい。


そう思われているのが手に取るようにわかった。


七島雪歩さんの時のように足を故障したから売るのだと言えば、故障した足などいらないと、値段は上がらない。


それを逆手にとり、金額が跳ね上がるようにすることだって十分に可能なのだ。