エレナと2人、何度も嘔吐しながらようやく家まで帰ってきたのを鮮明に覚えている。


「あたしも、あの時はもう二度と来る気はありませんでした」


あたしは扉の前に立ち、そう言った。


「だけど、このオークションは人の人生を豊かにしてくれる。そういうものだって気が付いたんです」


「そう……」


店員さんは複雑な表情でほほ笑んだ。


「でも、あなたはもうすでに素晴らしい才能を1つ持ってる。だから、それを忘れないでね」


店員さんの声を背中に聞きながら、あたしは階段を下りて行ったのだった。