「何言ってるの、あたしはここにいるじゃん」


「そうだけど、藤吉さんみたいに海外で活動するのかなって、思って……」


確かにあたしの事を扱ったニュース番組では海外に言って当然だというような事を言われている。


それがエレナを不安にさせていたんだ。


「エレナ、あたしはずっと日本にいるよ」


あたしはエレナの手を掴んでそう言った。


「うん……それなら、よかった」


ようやくエレナが笑顔になり、あたしはホッと胸をなで下ろした。


いろんな会社からスポンサーになりたいと言う申し出を受けているが、あたしはすべて断っているのだ。


会社の名前を背負って走るつもりはない。


大会で優勝して、メディアに取り上げてもらっただけで十分にお金もある。


必死で活動する理由が、どこにもないのだ。


走ることが好き。


走れたらそれで十分。


あたしの夢は、すでに叶えられたんだ。