「次の土曜日にある県マラソンには出るつもりだよ」


あたしがそう言うと、今まで黙っていたお父さんがテレビから視線を外した。


「県のマラソンか……。あまり強い相手はいないんじゃないか?」


「そうかもしれないけど、あたしとにかく走ることが好きなんだよね。だから、日にちの近い大会を選んだんだ」


大会へのエントリーはすでにしてある。


これから一週間また頑張ってトレーニングをして、本番に備えるのだ。


今回の大会は1位になれば高級車がもらえる。


あたしはまだ免許を取っていないけれど、両親へのプレゼントになると思ったんだ。


「せっかく世界を目指せるのに……」


お母さんは残念そうに言う。


「あたしは日本の中で、この家にいながら頑張りたいの」


「まぁ、それも1つのやり方だろうな。高校を卒業してからでも遅くはないだろうしな」


お父さんは嬉しそうな顔をしてそう言ったのだった。