オークション

大きく呼吸を繰り返していると、スタッフの人が酸素と水分を持って走ってきた。


あたしの体はバスタオルにくるまれ、人の手を借りながらようやく立ち上がる事ができた。


何が起きたのか、まだ理解ができなかった。


ゴール地点で待っているハズの両親を探すと、その姿が視界に入った。


2人とも換気余って涙を流している。


近づこうとすると、あっという間に取材陣に囲まれてしまった。


次から次へと質問を浴びせられて返答に困る。


何もできずに棒立ちになっていると、主催者が慌てたようでこちらに走ってきた。


「取材は後にしてください! 表彰式が先です!」


ざわめきにかき消されないように一生懸命声を張り上げて、あたしの手を握って強引に歩き出した。


「君、すごいね!」


歩きながら振り返り、50歳台とみられる男性はそう言った。


彼はマンマルマラソンでなくてはならない存在だと言う事は、よく知っていた。


「あたし……1位だったんですか?」


頭の中を整理するためにそう聞いた。


すると男性は大きな声で笑い、何度も頷いた。


「そうだよ、君が1位だ! 去年オリンピックで銀メダルを取った松田選手も追い抜いたんだ!」


そうだったんだ。


途中から頭の中は真っ白で、周囲を見ている余裕さえなかったから松田選手がどこを走っていたのかもわからなかった。