オークション

それがとても心地よかった。


2時間休憩なしで走り続けるのはもちろん辛い事だったけれど、今のあたしには高揚感しかなかった。


テレビの前の人たちはきっと画面に食いついてあたしを見ている事だろう。


お父さんやお母さんも、スマホでテレビ中継を見ながらゴール地点で待っているはずだった。


最初は完走できるかどうかもわからないから、見学には来ないと言っていたのだが、あたしが本格的に練習を始めたのを見て、来てくれることになったのだ。


そして、クラスメートたちも。


藤吉さんがいなくなってしまった喪失感を、あたしへぶつけるように応援してくれていた。


横断幕にあたしの名前を書き、大きな声でエールを送ってくれている。
みんながあたしを応援している。


みんながあたしを見ている。


その声にこたえるために、あたしはトップを貫く事が必要だった……。