藤吉さんが旅立つ日は日曜日だった。


あたしは新しく買ったジャージ姿で河川敷を走っていた。


42.195キロを実際に走りどのくらいのタイムが出るかはかるためだ。


クラスメートたちは今頃空港で藤吉さんと最後の挨拶を交わしているだろう。


だけどあたしは行かなかった。


ただひたすら、マラソン大会へ向けて練習を重ねる。


ようやく筋力トレーニングも開始することができて、目指すは1位の座。


国内からいなくなっている人の事なんて考えている時間なんてなかった。


藤吉さんには藤吉さんのやり方が。


あたしにはあたしのやり方がある。


風を切って走りながら、あたしは前だけをジッと見ていたのだった。