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5往復を終えて帰ってきたあたしは、すぐにタイムを確認した。


30キロを1時間40分。


時々信号に引っかかったにしては、悪くないタイムだ。


息は上がっていたが、まだ走れないほどではない。


42.195キロという距離の感想は余裕でできそうだった。


「藍那、なにしてるの」


玄関のドアを開けようとしたら、リビングからお母さんが顔をのぞかせてそう言った。


「走ってた」


そう返事をすると、けげんそうな顔をされてしまった。


マンマルマラソンに参加する。


そう言うと、両親は驚いた様子だったがすぐに承諾してくれた。


「マラソンなんて、急にどうしたの?」


夕飯を食べながら、お母さんが不思議そうに聞いてくる。


「あたし、走ることが好きだったなぁって思い出して、また走りたくなったんだよね」


ご飯を口に運びながらスラスラと嘘を並べる。


「確かに、藍那は足が速いからなぁ」


お父さんはビールを飲みながら昔を懐かしむように目を細めた。


「昔よりもずっと早くなってるよ」


あたしは言う。


「あぁ。楽しみだな」


お父さんは笑顔でそう返事をした。


あたしもそれに笑顔で返す。


だって、あたしの足はオリンピック選手の足だからね……。


心の中でそう思ったのだった。