さすが、毎日鍛えているだけあって見た目からして全然違う。


でも……負ける気はなかった。


スタートラインで何度かジャンプをして自分の足を確認する。


よし、いける。


そう感じて、体勢を整えた。


先生の笛がスタートの合図を告げる……。


そこから先は、真っ白だった。


ただ楽しくて風を感じて、グラウンドではないもっと大きな場所へと心が羽ばたいている。


体は地面から浮き上がり、広い空を鳥のように飛んでいる気分だ。


自由自在に向きを変え、速度を変え、行きたい場所へ行く。


今のあたしにはなんだってできる。


あたしの実力はこんなものじゃない。


もっともっと、上を目指せる!!


「北川さん!」


そう呼ばれてあたしは我に返って足を止めた。


気が付けば陸上部の部員たちはみんな足を止め、苦しそうに肩で呼吸をしている。


もうすでにトラックを何周も走っていたようだ。


まだまだ、これから気分が乗ってきたところだったのに……。


そう思いながらゆっくりと立ち止まる。


すると顧問の先生がすぐに駆け寄ってきた。


「北川さん、あなたすごいわね!!」


興奮気味にそう言い、あたしの手を握りしめる。