☆☆☆

その後、一緒に帰ろうと誘ってきたエレナを断りあたしは1人で陸上部の見学に来ていた。


20人ほどの先輩たちがグラウンドを走っている。


その邪魔にならないように1年生の部員たちがウォーミングアップをしていた。


1年生はまずグラウンドの整備をして、その間に先輩たちはウォーミングアップをする。


そして先輩たちが走り出した時に、1年生はウォーミングアップを始める。


そんなやり方のようだ。


「北川さん、見学?」


あたしに気が付いた陸上部の顧問の先生が声をかけて来た。


30代前半の筋肉質な女性の先生で、今日の体育の授業での成果をすでに知っているようだった。


「はい」


あたしは小さく頷いてそう返事をした。


「北川さんって足がすごく早いんですってね?」


「そんな事ないです」


あたしは笑顔で首を振った。


「うちの陸上部もなかなかの部員がそろってるから、ぜひ一緒に練習してみて」


先生にそう言われ、あたしは1年生の間に混ざってウォーミングアップを始めた。


梅上高校の陸上部は毎年いろんな大会に出場していて、卒業生の中にはプロの陸上選手になった人もいる。


ここで活動していれば、スポーツ推薦も夢じゃない。


ウォーミングアップを終えて、あたしと1年生は同じスタートラインに立った。


みんなあたしより背が高く、筋肉がしっかりと付いている。