あたしはそれを受け取り、マジマジと見つめる。


こんなに楽しそうに、生き生きとした表情で走っていたのだ。


「……ありがとう」


気まずさを感じながらもお礼を言うと、「あなたはいつ海外へいくの?」と、聞かれた。


あたしは目を見開いて「海外なんて……!」と、否定の意味を込めて左右に首を振った。


その反応に藤吉さんの方も驚いたように目を丸くする。


「どうして? これだけの実力があれば海外で活躍できるのに」


「国内で十分だから」


あたしはそう言い、また首を振った。


海外で活動するなんて考えたことは一度もない。


今はただ走ることが楽しくて、少しでも認めてもらえたらそれでよかった。


もちろん、ずっと走り続けるつもりでいるけれど、借金は350万だし、海外まで行く必要はない。


「そう……」


藤吉さんは少し首をかしげ、そしてそのまま教室を出て行ったのだった。