藤吉さんも、こんな感じなのだろうか。


みんなに見られ、歓声を浴び、そしてまた絵を描く活力を身に付ける。


気が付けば周囲の声援も耳に入らず、あたしは1人で走っていた。


グラウンドではない、目の前には世界が見えている。


大きな空が見える競技場で沢山の観客に見守られながら走っている。


次々とライバル選手を追い抜いて、トップに立つ。


あとはあたしの独走状態だ。


あたしの足は止まらない。


「藍那!!」


そう呼ばれてあたしはハッと我に返った。


目の前には小さなグラウンドが広がっている。


肩で息をしながら周囲を見回すと、一緒に走っていた子たちはすでに立ち止まっていた。


もう20分が経過したようだ。


あたしはペースを落とし、ゆっくりと立ち止まった。


「藍那、すごいね!」


エレナが興奮気味にそう言いながら駆け寄って来る。


「えへへ」


あたしは軽く笑って汗をぬぐった。