最低でも3年と言う事は、高校に戻ってこないと言う事だ。


「寂しい!」


「後でサインしてね!」


「みんなで写真も撮ろうよ!」


あちこちからそんな声が聞こえて来る。


身近にいる有名人が遠くへ行ってしまうと言う事で、みんな思いでを作ろうと思っているようだ。


藤吉さんとクラスメートだったという事は、みんなのステータスになる。


先生もそう思っているのだろう、藤吉さんを応援しながらも日本に止まってほしそうな顔をしている。


「日本を発つまであと少しだが、みんなで楽しい思い出を作ろう!」


先生がそう言うと、クラスメートたちからワッと歓声があがった。


海外へ行って日本の学校の事を聞かれた時に、少しでもいい思い出話をしてほしい。


そんな思いが透けて見えている。


しかしあたしも先生の意見には賛成だった。


海外へ旅立つクラスメートを全員で笑顔で暖かく見送る。


そんな感動的シーンは嫌いじゃない。


藤吉さんの才能が買ったものであると知っているから、こんなにも冷静にいられるだけだ。


あたしはちらりとエレナの方を見た。


エレナはみんなの話題に興味がないのか、窓の外を眺めていたのだった。