それからすぐに先生が教室へ入ってきた。


入ってきた途端、その笑顔で機嫌がいい事がわかった。


「今日はみんなにいい知らせがある!」


教卓立つなりそう言い、藤吉さんの方へ顔を向けた。


藤吉さんは少しほほ笑み、そしてゆっくりと席を立った。


事前に何かの打ち合わせがあったらしく、そのまま先生の横へと移動していく。


最近人気者の藤吉さんに、クラスメートたちの好奇心が降り注いでいるのがわかった。


「みんな、藤吉の絵があらゆる場面で認められていることはもう知っているな?」


先生の質問にあちこちから「知ってる!」という返事がある。


藤吉さんの絵はあれから色々なコンクールで金賞を取っているのだ。


世間でも有名になり始めていて、ニュース番組ではコンクールを総なめにする期待の新人だと騒がれていた。


「日本だけではなく、海外でもその活躍が認められてきている。それに伴い、藤吉さんは海外留学へ行くことになった」


先生の言葉に沸き立つ教室。


藤吉さんはその光景を柔らかくほほ笑んで見つめていた。


こうなることは当然だと言うように、少しも臆してない様子だ。


「海外留学は最低でも3年間。そのまま海外で暮らす事にもなるかもしれないそうだ」


先生が少しだけ寂しそうな表情を浮かべた。